緑内障手術にこだわる

今日もアイステントを2例に行いました。これを含め、白内障手術を計13例行いました。コロナ後で症例数がまた増えてきています。

 

最近は乱視矯正にこだわっています。術後に1.0D以上の乱視(角膜乱視)を残さないよう、トーリックIOLを使うか強主経線切開を行います。だいたい3例に1例がそのような症例です。マーキングと軸合わせに多少の余分な時間がかかりますので、昔よりも全体的に時間がかかってしまいますが、裸眼視力が向上することにより、患者さんの満足度が上がります。

 

昨日も述べましたように、当院では緑内障手術にもこだわっており、その中身はSLT(Selective Laser Trabeculoplasty)、アイステントおよびトラベクレクトミー(濾過手術)です。

 

手術にこだわる理由は、点眼薬とSLTの治療成績を比較検討したLancetの論文が出たからです。いつかこのブログでも紹介していますが、この論文ではPOAGの初回治療(初めて行う治療)として点眼薬よりもSLTの方が優れており、その理由は点眼薬ではアドヒアランスが悪いからとされています。

 

1年365日点眼を続けることは確かに難しく、いつの間にか中止したり、忘れていたりということが30%以上起こり得るというのがアドヒアランスに関する共通認識です。SLTの場合、1度の施術で1年間は眼圧下降作用が持続するとされていますので、その差は明らかです。

 

加えて、10分ほどの外来での施術であり、痛みや副作用がほとんどなく、保険適用ですので安心です。高眼圧症(眼圧が高いが視野変化はない)や初期のPOAGの治療に向いています。

 

一方、アイステントはSLTよりも強い眼圧下降作用がありますが、観血手術であり、白内障手術と同時でないと行えません。POAGの治療を受けていた人がたまたま白内障手術をする機会があれば行うべき治療法です。初期〜中期のPOAGです。

 

それでも視野の進行が止まらない時は濾過手術の適応になってきます。濾過手術は眼内液を結膜の下へ導くことにより眼圧を下げる方法で、隅角や水晶体と関係なく眼圧を下げれますし、手術が成功すれば数年にわたり安定した下降作用を得ることができます。中期〜末期のPOAGに行います。

 

濾過手術は術式としてはシンプルですが眼圧の調整が難しく、眼圧が低すぎたり、元に戻ってしまったりということがしばしば起こります。10〜15mmHgの眼圧を1年以上持続させるには、手術そのもの及び術後管理で細心の注意が必要です。

 

ST