緑内障の手術

緑内障の手術といえば、点眼薬の効果が不十分な際に行うことがある、いわば最後の手段と思われている方も多いことでしょう。患者さんとお話をしてみると、ほぼ100%がそのようにおっしゃいます。

 

確かに、私が眼科医になりたての頃は、緑内障手術とは周辺部虹彩切除術がメインで、閉塞隅角を開放するためのものでした。つまり、閉塞隅角緑内障の治療手段でした。開放隅角緑内障POG)を手術で治すとの考えはほとんどありませんでした。

 

その頃から相次いで新しい点眼薬が開発され、特に1980年代に出てきたプロスタグランジン薬は全身的副作用がほとんどないうえ、降圧作用が良好なので、POGの治療薬として現在でも第一選択とされています。点眼薬は作用機序の違ういろんな種類のものがあり、重複して使用すると効果がより高まるということで、何種類もの点眼薬を併用していらっしゃる患者さんも多いことと思います。

 

では点眼治療のみで十分かと言うと、残念ながらそうではありません。その理由は第一に眼局所の副作用が強く、点眼を中止してしまうことが多いことにあります。副作用として、充血、ドライアイ、眼瞼の色素沈着、眼の落ち窪みなどが挙げられます。

 

そこで最近注目されているのが、POGに対する手術加療です。そのうち最も手軽に行えるのがレーザー治療です。POGに対するレーザーは眼の中の水が出ていくところ(線維柱帯)へ当てるヤグレーザーで、SLTといいます。

 

SLTの効果は最低1年間持続し、点眼薬で見られるような副作用がありません。術後1ヶ月以降15%程度の眼圧下降作用が見られるのが普通です。点眼薬の重複使用に比べると下降作用は少ないですが、効果が持続するからか、点眼薬に比べても視野の進行を防ぐ効果がより優れているとされています。

 

次に注目されるのが白内障手術との同時手術が保険収載されたアイステントです。これは線維柱帯へ留置するごく小さいステント(水の流れを良くする装置)で、前房から眼外への流出抵抗を下げるため、その効果は抜群です。半数以上の症例で術後ローティーン(<15mmHg以下)を達成することができます。

 

ローティーンになれば、たとえもともと神経の弱い正常眼圧緑内障(NTG)でも治療効果が期待できます。これは点眼薬では困難な領域でもあります。

 

従来からの最終手段、濾過手術(トラベクレクトミー)の前にこれらの方法を積極的に行うことにより、点眼薬を使わなくてもPOGをコントロールできる可能性があります。

 

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