SLTと点眼療法の比較

緑内障(開放隅角緑内障、POAG)の治療を開始する際、当院では点眼薬かレーザー(SLT、選択的レーザー隅角形成)のどちらで開始するかを決めるため、患者さんに詳しく説明いたします。一般的にはまだまだ点眼薬が主流であり、他医ですでに点眼薬治療を行っておられる患者さんも多いですので、この説明はなかなか難しいです。

 

と言いますのも、SLTで開始するという考えは、ごく最近の論文によるもので、未だ一般的ではないからです。では、点眼薬とSLTとではどのような違いがあるのでしょうか。

 

1)治療の効果(眼圧下降作用)はほぼ同等ですが、点眼では1週間以内に効果が現れるのに対して、SLTでは効果の発現に1〜3ヶ月かかります。SLTは慢性的に経過するPOAGには向いていますが、即効性を求めたい続発緑内障などには向いていません。

 

2)副作用は圧倒的にSLTの勝利です。緑内障の点眼薬は充血、ドライアイ、色素沈着、眼球陥凹といった副作用に悩まされますが、SLTではありません。

 

3)アドヒアランス(持続性)でもSLTが圧倒的です。SLTでは一度の施術で1年以上効果が持続します。しかし、点眼薬は毎日の点眼が必須であり、点眼を怠ると眼圧下降作用もなくなります。毎日の点眼を1年以上にわたって続けるのは想像以上に困難であり、達成できるのはせいぜい患者さんの70%が限度というデータがあります。年齢とともに点眼のアドヒアランスはさらに悪くなります。

 

2)と3)を考慮しますと、POAGと初めて診断された視野変化が初期の症例では、SLTで治療を開始するのがベターと考えます。

 

SLTを両眼に行い、以後3ヶ月に1度の経過観察で視野とOCTを測定します。視野が進行するかどうかを確かめ、変化がない場合は点眼フリーを続けます。眼圧が上がってきたら再度のSLTを行います。70%の患者さんはSLTのみでコントロール可能というデータがあります。

 

視野の進行を認めるなら、更なる眼圧下降が必要ということであり、MIGS(iStent)やレクトミーといった観血的手術が視野に入ってきます。

 

POAGで点眼フリーを目指すなら、SLT→〜→iStent(白内障手術)→レクトミー→〜という流れになります。

 

しっかり見よう、100まで!

 

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