LIGHT 続報

緑内障POG)の治療は眼圧を下げることで、その人にとって十分な眼圧下降があれば、視野の進行が抑制されます。緑内障は慢性疾患で、見つかったとなると一生涯にわたって治療を続けなければなりません。診断される年齢にもよりますが、平均して10年以上の経過観察、加療が必要です。

 

眼圧をさげる治療法として、点眼薬、レーザー、手術がありますが、もっとも手軽なため、点眼で開始することが一般的でした。しかし、点眼薬には副作用があり、それを10年以上も続けるとなると、副作用も強く出てきます。また、いつのまにか忘れて、点眼を止めてしまうことも多いです。

 

レーザーにもいろんな方法がありますが、2001年に導入されていらい、世界的に標準化しているのがSLT(選択的ヤグレーザー)です。SLTも当初は点眼治療の補助として使われていたのですが、副作用の強い点眼の代わりに単独で使ったらどうかとの提唱がなされ、SLT単独と点眼の大規模比較試験が行われたのです(Laser in Glaucoma and Ocular  Hypertension Trial=LIGHT)。

 

最近、6年間におよぶ比較試験の最終的な結果が出たので紹介します。

 

Laser in Glaucoma and Ocular Hypertension (LIGHT) Trial   Six-Year Results of Primary Selective Laser Trabeculoplasty versus Eye Drops for Treatment of Glaucoma and Ocular Hypertension  Gazzardら (Ophthalmology 2022, open access

 

SLT群、点眼群とも経過によっては点眼やSLT、手術を追加できます。6年経過ののち、SLT開始群、点眼開始群とも300眼ずつくらいが集まりました。SLT群のうち72%が6年後も点眼フリーだったのに対して、点眼開始群では23%でした。SLT開始群では6年経っても点眼の必要なかった症例が多数だったことになります。一方点眼開始群では、最初は点眼のみだったところが、6年のうちにSLTや手術を追加せざるを得なかった症例が23%あったことになります。

 

また視野の進行を認めたのはSLT群で19.6%、点眼群で26.8%と有意にSLT群がすぐれていました。結果として、経過中に濾過手術(最終的な眼圧下降手術)を行った症例はSLT群で2.4%、点眼群で5.8%と前者がより少ない結果でした。

 

SLTで開始したほうが臨床経過が良かったとの結論です。この論文は多施設のRCT(randomized clinical trial)であり、限りなくバイアスが取り除かれていますので、世界的な影響は甚大であり、英国においてはSLT-first(POGの治療では点眼ではなくまずSLTを行う)が公式に推奨されるに至ったほか、米国、EUでもSLT-firstが認められることになりました。

 

日本ではまだまだ点眼開始がほとんどですが、われわれの施設では3年前からこの論文に注目してSLT-firstを実践しており、とてもよい結果を得ています。3年を経過して、今のところ点眼フリーが90%以上です。

 

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