アイステントの打率

インジェクトになってますます効果がアップしたアイステントは、今や緑内障手術の切り札の一つになっています。もう一方の切り札、トラベクレクトミーに比べ眼圧下降効果は劣るものの、低眼圧による視力低下やブレブからの感染などの大きな合併症がありませんので、緑内障手術の第一選択になり得ます。

 

欠点は単独手術が健康保険で認められていないこと。白内障手術と同時に行う場合に限られるのです。したがって、緑内障の診断が確定しており、点眼治療などを行なっている患者さんが白内障手術を受ける機会があれば、このチャンスを逃がさずアイステントを行うのが良いでしょう。

 

アイステントの挿入はメーカーが用意する使い捨ての打ち付け器で行います。この器具には2個のアイステントがセットされており、次々と隅角に打ち付けるわけですが、この操作はいくつかのコツがあり、慣れるのにやや時間がかかります。

 

あたかもカナヅチで釘を打つように、ボタンを押せば打ち付けられます。しかし、何らかの理由でアイステントがうまく刺さらない場合、眼内に浮遊するアイステントをもう一度針先で拾って、再度挑戦することになります。この操作が結構難しい上、打ち付けは合計4回までしか行うことができません。

 

ということは、アイステント1個につき1回しか失敗は許されない訳で、最悪4回打って1個も入らないという事態もあり得ます。その場合はアイステントを諦め、谷戸式のマイクロフックでロトミーを行います。幸い最近は打率が向上しており、7〜8割は一度で刺さりますし、拾い直して再度挿入することも含めると、ほぼ100%2個とも挿入できるようになりました。

 

コツの1)針を刺す位置。シュレム管の真ん中からやや上(角膜寄り)がベストです。2)は角度。なるべく虹彩スレスレから上に向かって刺します。そのため、角膜切開創も強膜寄りギリギリを狙っておきます。3)は抑える強さ。抑えすぎると後ろに滑ることがあります。1発目は重なった2個のアイステントを同時に打つことになるため、打ち付け効果がやや劣ります。刺さらず返ってくる確率が高くなるので注意です。1個目を失敗すれば、2個目を挿入したのちに拾いに行くのが良いでしょう。

 

アイステント術直後の眼圧下降効果はすこぶる良好ですが、長期経過でどの程度効果が持続するかがポイントですので、今後とも慎重に経過観察していく必要があります。

 

以上、個人的見解を多く含みますのでご注意ください。

 

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