アイステント インジェクト (2)

このところ毎週のようにアイステント(インジェクト)を入れています。アイステント(iStent)とは眼圧を下げる効果のある眼内留置デバイスで、白内障手術と同時に行う場合に限り、保険収載されています。

 

保険収載されたのは2019年4月で、以来、初期~中期の緑内障(POAG)の患者さんが白内障手術を受けられる際には、なるべく使うようにしてきました。術後の眼圧が低ければ、その後の緑内障の進行を遅らせる効果が期待できますので、患者さんにとって良いことだからです。

 

アイステントは昔から行われている緑内障手術のトラベクロトミーと同類です。ロトミーでは隅角の線維柱帯を切開し、その部分の抵抗力を下げることにより眼圧を下げます。しかし眼圧の下降効果は限定的で、「ローティーン(<15mmHg)を目指すものではない」と教わってきました。よって、薬剤の数は減らせるものの、「緑内障が治った」と安心できるものではなかったのです。また、術後数カ月で眼圧が戻り、手術の効果が無くなってくることもありました。

 

その点、アイステントは前房とシュレム菅の間に永久的なシャントを作るデバイスですので、創傷治癒が働いてきても効果が持続する可能性があります。高価なアイステントを使う理由はそこにあると思っていました。

 

ところが、このアイステントは2020年秋に改良され、アイステント インジェクト(iStent inject W)に進化しました。そしてその眼圧降下作用が、想像を絶するくらいに優れたものだったのです。

 

当院のデータでは、アイステント インジェクトにより術後1ヶ月で平均眼圧が13.6mmHgに下降し(n=22)、8割の症例でローティーン(<15mmHg)を達成できました。旧アイステントの術後1ヶ月の眼圧(15.5mmHg、n=34)よりも有意に低い値でした(ローティーン達成率は4割)。

 

これはいくつかある論文報告と一致しており、旧アイステントよりも新アイステント インジェクトの方が優れた効果が得られることがわかります。しかも多数でローティーンになるということは、ロトミーを超えてレクトミーに迫る効果です。適応をもっと拡げれるのではないかと考えています。

 

緑内障の患者さんが白内障手術を受ける際には、是非ともアイステント インジェクトを併用したいものです。

 

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