低侵襲緑内障手術(MIGS)

6月に入って、コロナによる受診の控えが解消し、多くの患者さんに来ていただいています。しかし、油断はできないので、マスク着用(スタッフおよび患者さん)、頻回の消毒、手洗い、ソーシアル ディスタンスに気をつけていただいています。

 

大阪のとても頼りになる専門家集団によると、2mの距離を取るよりは、会話をしないことの方が有効だそうです。これで飛沫感染が防げるからです。会話をする場合はマスク着用が必須です。

 

さて、新患が増えてくると、どうしても緑内障の患者さんが増えてきます。中高年の受診が多い当院では、緑内障を引き当てる確率もまた多くなります。そこでMIGS(低侵襲緑内障手術)です。

 

緑内障の治療は眼圧を「必要なだけ」下げることで、その効果は数ヶ月以上の経過観察により始めてわかります。例えば、点眼薬で実際に眼圧が少し下がったとしても、それで治療が完了したとは言えません。

 

なんらかの処置、あるいは手術により眼圧下降が見込める機会があれば、一つでも取り入れて、治療効果に繋げた方が良いでしょう。

 

MIGSは点眼薬に代わる、あるいは点眼薬を補完するために、欠かせない治療方法です。

 

広い意味でMIGSを低侵襲で眼圧下降効果のある外科的処置と規定すると、その筆頭は疑いもなく、SLT(選択的レーザー隅角形成術)になるでしょう。SLTは観血手術ではなく、副作用も痛みも極小ですが、トラベクルムを破壊するという意味で、トラベクロトミーと同じ部類であり、アイステント、フックロトミーを行う前に、一度は試す価値があります。

 

緑内障と診断された症例に、点眼薬を開始する前にSLTを行い、SLT単独(点眼薬なし)で半数以上の症例をコントロールできたとの論文が昨年出ましたので、最近、特に注目されています。

 

次に出てくるのは、アイステントです。白内障手術の際に使用するデバイスで、眼圧下降効果は少ないものの白内障単独よりも有意に下降することが確認されている上、出血などの副作用が少ないので、白内障手術に加えて行えば、患者さんにそれと意識されることがないまま、緑内障治療が行えるメリットがあります。

 

これらは、より侵襲の大きい(それでも一応MIGSに分類されている)マイクロフックロトミーなどを行う前に、緑内障と診断された患者さんには、まず行うべき治療法と考えます。

 

緑内障手術は、SLT⇨アイステント⇨フックロトミー⇨エクスプレス(濾過手術)の順番に侵襲が大きくなりますので、この順に考慮していけば良いでしょう。うまくいけば、点眼薬の使用をやめる、あるいは減らすことができます。

 

目標は視野の進行を抑えること。1年以上のタイムスパンによる観察が必要です。

 

ST