ショパンの練習曲

ショパンの練習曲作品10と25は、ピアニストにとって必須の課題とされています。アマチュアにとってはもちろん難曲ばかりで、打鍵の早さ、強さ、手の拡大、音の跳躍などが求められます。

たとえば作品10の1。9度から11度のアルペジオの連続で、右手の体操です。多分子供の手では弾けないので、初めて取り組むのは中学〜高校でしょう。楽譜に指示された通りの早さで弾くと、2〜3小節を過ぎた頃から、早くも疲れが出てきます。最後まで力強く弾くのは容易ではありません。

対照的なのが作品10の12。こちらは「革命のエチュード」と呼ばれており、左手の体操です。これも最後の方で、疲れをいかにごまかすかが大切ですが、幸い、というかずるいというか、ショパンは最後のほうで、ゆっくりかつ弱い音で弾く場所を作ってあります。そのため、10の1よりはるかに弾きやすいのです。

作品25の1は「エオリアンハープ」とよばれる、分散和音の曲です。比較的弾きやすく、かつとてもきれいな曲です。25の11は「木枯らし」とよばれ、右手の体操です。25の12は「大洋」とよばれ、独特の美しさと輝きがあります。

これらの数曲とバッハのインベンションやパルティータからの数曲を日課としています。バッハとショパンがあれば他はまあなくとも練習には困りません。

練習曲全曲はピアニストにとって一里塚ですから、数えきれないほどの録音が残されています。初めて全曲録音を行ったのはバックハウス(Wilhelm Backhaus)というドイツのピアニストです。この人は晩年ほとんどベートーベンしか弾きませんでしたが、実はいわゆるバカテクの走りで、当時(1920年代)不可能とされていた全曲録音に挑戦しました。

私が最も尊敬している演奏は、チリのピアニスト、アラウ(Claudio Arrau)によるものです。ひとつの音としてペダルでごまかすことなく弾いています(1950年代)。これほどの演奏は現代に至るまで、そうそうお目にかかれるものではありません。

アラウのエチュードは最近出たEMI録音集成に入っています。HMVでまだ売ってるでしょうか?


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