事実は小説よりも...

「眼科 検査・診断のコツと落とし穴」というタイトルの眼科の教科書があります。
タイトル通りのことが載っているのですが、こんな本にすら書かれていないような様々なことが医療現場では起こります。
たとえば、視野検査は暗室でやや長時間行うので、途中で寝てしまう患者さんが時々おられます。当然、結果は大きな視野欠損になってしまってびっくりさせられますので、検査の結果を鵜呑みにはせず、まずは患者さんにきちんと検査が受けられたかどうかを必ず聞くようにしています。
他には、絶対にありえないような形状の視野欠損の患者さんも昔おられました。原因が分からないので再検査したのですが、やはり同じ結果です。
そこで、視野の検査器械が壊れていないか確認するために、やや無理な体勢ながらも頑張って機械を動かしながら患者さんの方を覗き込んでみると、なんと患者さんの着ているパーカーのフードの部分が器械の出す光の影になって視野欠損になっていると判明しました。
当時、自分でこれを勝手に「パーカー暗点」と名づけてみたところ、同僚の医師やスタッフにはウケていました。
「事実は小説よりも奇なり」(この場合は小説ではなく教科書ですが...)ということわざがありますが、臨床の現場と言うのは本当にいろいろな要素があって難しいと思うと同時に、興味深いと感じることも多いです。
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