脱臼IOLとデカリン

今日は予定手術の何例かがキャンセルとなりました。やっぱり、あんまりにも暑いので、体調を崩される方が多いです。

お昼からはIOL脱臼の摘出+縫い付け手術が行われました。

IOL完全脱臼では、液体フルオロカーボン(デカリン)を使います。デカリンは比重が高いので、硝子体中に注入すると、後極部側に溜まり、IOLが浮いてきます。あとは、比較的簡単に、角膜輪部から摘出することができます。

IOL縫い付け手術では眼球の虚脱が悩みの種です。脈絡膜出血の原因となるからです。安全に手術を遂行するには、なるべく眼圧を保たなければなりません。

ところが、全長1cmに達するIOLを摘出する時、また、新しいIOLを縫い付ける時、眼球の虚脱を防ぐ方法はありません。デカリンが注入してあれば、網膜、脈絡膜を圧迫いたしますので、眼圧が下がっても比較的安全と思われます。

せっかくのデカリンですので、IOL縫い付けの操作が終わるまで入れておくことにいたしました。

私は1987年頃、Changの論文を読んで、(多分日本では最も早く)フルオロカーボンを使いました。最初の例は鋸状縁断裂による巨大裂孔網膜剥離でした。

当時、フルオロカーボンの眼科用製剤はなく、代用血漿として研究されていたものをある会社から貰い受けて使用しました。それに比べると、デカリンははるかに純度が高く安全です。おまじないのように、必ず一個は在庫するようにしています。


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