緑内障の緊急手術

今年になってから、どういうわけか緑内障の緊急手術が相次ぎました。眼圧が40mmHg以上になるような緑内障発作(閉塞隅角)、続発緑内障などが対象です。放置すると短期間で失明に至るので、早急に対処しなければなりません。

 

方法は二つ。閉塞隅角の場合は、隅角を開放するため、白内障手術、硝子体手術、隅角癒着解離術を必要に応じて行います。

 

開放隅角の場合はトラベクレクトミー(濾過手術、レクトミー)を行います。開放隅角で突然眼圧が上がるのは、血管閉塞に伴う新生血管緑内障に多く見られます。糖尿病や閉塞性眼底疾患(CRVOやAIONなど)が基礎にあります。気温が下がり、循環不全が発症しやすい環境と関係しています。

 

レクトミーはPOG(普通の緑内障)で眼圧を大きく下げたい場合にも行います。緑内障の治療の上で最高の武器です。今年の年賀状で鬼滅の刃と表現した先生もいらっしゃいました。

 

レクトミーは手術操作こそ単純なものの、奥が深い手術です。房水を結膜下に漏出させて眼圧を下げるのですが、量が多すぎると眼圧が下がりすぎてしまい、視力不良になりますし、ちょっと油断すると創傷治癒が働いて漏出が止まり、眼圧が上がってしまいます。このさじ加減は非常に難しいものがあります。

 

抗がん剤のMMCを術中に用いることにより、創傷治癒を遅らせます。創傷治癒が完成していない術後1〜2週間が勝負で、この間に適切な量の房水漏出による大きなブレブ(濾過胞)が出来なければなりません。そのためには、術中、術後にいくつかの工夫が必要です。

 

眼圧が10mmHg前後に落ち着き、それが半年以上続くと成功です。うまくいけば点眼フリーで視野の進行を止めることができます。

 

安定したレクトミーを目指して、デバイスが開発されつつあります。結膜下と前房をつなぐ管で、適切な量の房水が流れるそうです。トラベクロトミーにおけるアイステントのようなメリットがあれば良いのですが、レクトミーの場合流量の調整が難しいので、簡単には行かないでしょう。

 

ST