濾過手術

濾過手術(レクトミー、Lec)は眼圧が高くて薬剤によるコントロールができない場合に有効な手術です。緑内障手術の切り札とも言えます。特に、開放隅角緑内障(POAG)で複数の点眼薬でも視野の進行が止まらない場合によく行います。

 

放っておくと視野が進行していく状態ですから、すると決めたならばなるべく早くに行うのが良いでしょう。白内障LASIKのような待機的手術(elective surgery)ではありません。網膜剥離のような緊急対応ではないものの、当院では1ヶ月以内には行うようにしています。

 

この手術では眼内液を結膜下へ漏出させ、結膜のコブ(ブレブ)ができるようにします。コブに水が溜まるようになれば、眼圧は結膜の張力で決まりますので、10mmHg前後やそれ以下にでも下げることができます。

 

ただし、下げすぎると低眼圧黄斑症になり視力が低下します。眼圧は10~15mmHgに収まるのが理想です。

 

ブレブは術中ではなく、術後に作ります。術直後から濾過量が多すぎると、前房が潰れて眼外に房水が漏れるようになり、患者さんは「涙が止まらない」と訴え、眼圧は低くなりすぎ、感染の危険もあります。術直後には前房が深く、濾過量は少なめでなくてはなりません。

 

大きなブレブを作るのは、輪部結膜の癒着が完成する術後1週間目くらいです。その頃に適切な濾過量があれば手術は成功です。ブレブを作るためには、レーザーによる切糸や眼球圧迫を行います。この期間を逃すと強膜が癒着して房水漏出が止まり、元の木阿弥になります。術後1週間の対応がとても大切です。

 

緑内障点眼なしで眼圧10mmHgを10年間維持するのが理想ですが、その通りにはなかなかなりません。レクトミーは奥の深い手術です。

 

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