薬剤性ドライアイ

白内障の手術を受けたのに一向にスッキリしない、と訴える患者さんは多いです。原因はいろいろありますが、見逃しやすいのが点眼薬による二次的なドライアイ症状です。

 

点眼薬の副作用で角膜の表面にデコボコができ、涙の乗りが悪くなり、重症のドライアイと同じように視力が低下することがあります。

 

軽度では角膜表面が点状に染まるだけですが、ひどくなると屈折が変化したり、矯正視力が低下します。

 

白内障の術後にほぼ必ず投与される非ステロイド系抗炎症点眼薬(NSAIDs)は、角膜表面を傷つける副作用がありますので注意が必要です。

 

そもそもこの点眼薬は、手術やIOLによる炎症を抑え、視力に影響する黄斑部の浮腫(CME、術後1ヶ月で好発)の発生を予防する目的で投与いたします。これが、ドライアイの原因になり、視力低下を来すとすると、本末転倒です。

 

海外でも術直後は注意して使うか、使用しないとの報告があるくらいです。網膜前膜や糖尿病といったCME悪化因子があるならともかく、手術自体も全身状態も何ら問題ないケースでは使用を見合わせるとの選択肢もありです。

 

先日初診で来られた患者さんは、白内障術後1週間経つのに「膜が貼って見えない」との訴えでした。

 

診察いたしましたところ、やはりといいますか、激しいドライアイ症状がありました。もう片眼もその傾向があったことから、もともとドライアイで傷つきやすいところに、NSAIDsの点眼をきっちりさしすぎたので、角膜の傷が悪化したと考えられました。

 

さっそく、術後1週目ではありますがNSAIDsおよび抗菌点眼薬を中止し、ムコスタ点眼に切り替えたところ、劇的に視力が回復しました。

 

同じようなことは緑内障の点眼薬の一部でも生じます。「目薬をきっちりさしてるのに、だんだん悪くなってるようだ」と感じる場合、薬剤性ドライアイの可能性があります。

 

ST