バッハ=シロティ

バッハの平均律といえば、ピアノ音楽愛好家にとって聖書とも言うべき作品集です。プレリュードとフーガを一対として、全24調性の各2曲ずつ、合計48×2の壮大な作品集です。音楽のすべてがここにはあります。

このなかの1巻の10、ホ短調のプレリュードが今日の話題の主です。

1970年頃、小生が20才を少し出た頃の青春時代、有名なピアニストのエミール ギレリスの演奏会に行きました。ギレリスといえばリヒテルと双璧と謳われた割にはそれほど人気がなく、当日の会場(フェスティバルホール)も一杯とは言えない状況でした。

確か、シューベルトの「楽興の時」、ブラームスの作品116、そして同じくブラームスパガニーニ変奏曲を弾きました。

そして、演奏のあと、アンコールに応えて弾いた曲が、単純ながらとても美しい曲で、バッハの平均律からのプレリュードをシロティが編曲した曲だったのです。この曲の美しさは、40年以上経った今日でも忘れることができません。

バッハ=シロティのプレリュードは、原調ではなく、ロ短調に移調してあります。そして、現曲の途中からの早くなるストレッタは省略しています。かつ、ゆっくりな部分を必ず繰り返し、繰り返しでは中声部を強調することと、わざわざ楽譜に書いてあります。それが、現代ピアノの優秀な機能とあいまって、類い稀な効果を引き起こすのです。

最近購入したシロティ集には、もちろんこの曲が真っ先に入っています。

また、他のバッハ編曲とともに、ショパンやリストの校訂譜も入っており、実に興味深い内容となっています。

シロティはリストに直接習ったことがあり、この中のリスト作曲「泉のほとりで」や「ため息」はとても優れた校訂譜と思います。よい楽譜に巡り会いました。

シロティはかのラフマニノフの叔父ということで、顔も良く似ていますね。他の大多数の作曲家、名演奏家と同じく、ウクライナの出身です。

プーチンウクライナを手放せない理由も、ロシア文化の伝統を考えれば、納得できます。

どうでもいいことですが、日本人にはとても装用できない、立派な鼻メガネですよね。

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