インヴェンション

先日東京へ行ったおり、銀座のYAMAHAをふらりと覗いていると、バッハのインヴェンション(とシンフォニア)のブゾーニ版の翻訳楽譜を見つけたので早速買いました。
ブゾーニは20世紀初頭の名ピアニスト兼作曲家で、バッハには特に深い造詣があり、鍵盤楽器のためのほぼ全作品を校訂し、出版しています。一般的にはオルガンのためのコラールをピアノ用に編曲したものが有名で、ホロヴィッツがよく弾いていました。

昔々、ピアノを習っていた小学生の頃、バッハの「イタリア協奏曲」を取り上げたことがあり、楽譜がなぜかブゾーニ版でした。バッハの原典(書かれた通りの楽譜)はベーレンライター版に見る通りですが、音符が並んでいるだけで速さ、強弱、スラーなどの指示がありません。

バッハの時代、鍵盤楽器チェンバロでしたし、当時の演奏は教会に所属するプロが行うもので、家庭でアマチュアが楽しみで弾く習慣がなかったことにより、楽譜を出版して商売にすることもなかったことによります。

ところが現代のピアノはタッチで音楽を作りますので、強弱やフレーズの指示が無い楽譜だと困ってしまうのです。ブゾーニ版はピアノで弾くことを前提に校訂されていますので、あれこれ考える必要がありません。

トリル、モルデント、ターンについても記号ではなく、音そのものを書き出してあるので楽です。

旋律と同じリズムでトリルをつけていることが多く、グールドの演奏とも通じます。グールドは多分ブゾーニ版も参考にして演奏していたに違いありません。というのも、小学校の頃習っていたピアノの先生がカナダ人のシスターでグールドと同郷だからです(根拠は弱いです)。

ブゾーニ版バッハの輸入楽譜はあれこれと揃えているのですが、インヴェンションはまだだったところ、なんと、この曲集だけ、YAMAHAから翻訳出版されていたのです。

良い楽譜が安く手にできて、大満足でした。

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