現代(2021年)の音楽シーンで、ピアノリサイタルという形式がまだ残っています。試しに日経新聞など見ると、〜〜演奏会とあり、曲目はベートーヴェンのソナタ、ショパン数曲、シューマン「謝肉祭」と言ったものや色々ありますが、作曲家は大体決まっており、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマン、リスト、ドビュッシー、ラヴェル、ラフマニノフあたりが定番です。
中心はベートーヴェン(1770年生まれ)からリスト(1821年)までの5名で、作品ができた時期は1800年から1850年くらいまでの半世紀に集中しています。演奏家が自作を取り上げることは今やほとんどありません。いわば、ピアノリサイタルというのは、19世紀前半の音楽を回顧する催しとも言えます。
なぜこんなことになっているのかと疑問を抱かないでしょうか。200年前に創作された音楽が今なお演奏会の主流であることは驚嘆すべき事実です。
自宅の書棚にはピアノの楽譜がたくさんあります。この中から、その時の気分に応じて好きな曲を演奏しています。楽器はスタインウェイのA-188です。よく取り上げるのはやっぱりモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマンです。
その他、メンデルスゾーン(無言歌集)、グリーグ(抒情小曲集)、スメタナ(ポルカ)、など、初見で弾きやすく美しい曲もたくさんありますが、演奏会では取り上げられることはありません。易しすぎて拍手喝采を浴びにくいからでしょう。
シューマンが書いていますが(『音楽と音楽家』岩波文庫)、シューベルトの歌曲をリストが編曲したものは、技巧的に難しい上に原曲から離れすぎているとのことです。それだったら、歌手の伴奏譜に旋律を付け加えて、シューベルトの原曲を弾いた方がよほど楽しいですね。ペータースから全7巻(!)で出ています。
シューマンのこの本は貴重な文献です。シューマンがいかにベートーヴェン、シューベルト、ショパンを評価したか、まるで現代の評論家のようです。ベートーヴェンの「運命」交響曲を評して、「今後数百年経っても聴き続けられる」との予言を行なっています。
伴奏譜は歌曲のみならず、バイオリンソナタ、ピアノトリオ、ピアノ四重奏、ピアノ五重奏など、作曲家もモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ブラームス、フォーレ、チャイコフスキーまで多数あり、独奏譜よりも容易なので、アマチュアには最適です。
あと協奏曲の独奏部分、伴奏部分を一緒に弾くのも楽しいですね。ピアノ演奏の楽しみ方は無限です。
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