論文の不正について

NHKの番組で医学の論文不正の問題が取り上げられています。例のスタップ細胞以来、論文不正に大きなスポットライトがあたるようになりました。番組では東大の分子生物研における多々の不正があげられていました。

出来ていない研究成果がなぜ発表されるのか。理由は簡単です。基礎科学の分野で研究費を獲得するためには、その分野における正統性のあるピアレビュージャーナルに論文が出されていなければならないからです。

3年の研究費を得たとしますと、3年目には「必ず」一流雑誌に掲載されなくてはならない。これは研究者にとって大きなプレッシャーとなり、不正を働く動機になります。

番組でも触れられていましたが、たとえば工学や臨床医学の分野では、資本力のあるスポンサーがすでにあり、ポストを丸ごとかかえていたりといったことがあります。研究者の身分、研究費ともあらかじめ用意されていますので、研究者は研究に没頭するだけでよく、定期的に一流雑誌に論文が掲載されるべしといったプレッシャーがありません。

しかし、プレッシャーがかからないのもまた問題で、停年を迎えるまで、まともな論文が一編も書けなかった教授というのもまた困ります。

われわれ臨床の分野も実は自然科学の一領域で、そこここに真実が隠されており、それを正確に記述することが論文になることもあります。ここでは、研究費をいただいている訳ではありませんので、研究不正は起こりえません。

臨床医学の研究においては、目の前の患者さんの語る真実を見逃さないようにすることで、どんどん前に進めることができるように思います。

ST