増殖型糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は失明につながる眼科疾患の代表です。特に増殖型になると、適切な治療を怠ればとても予後不良となります。

最近当院でも、このような増殖型糖尿病網膜症(PDR)をよく見かけます。PDRでは、網膜の血管閉塞がおこり、網膜表面の硝子体との境界部分に新生血管が生じ、時にこれが破たんして、硝子体出血となります。あるいは、網膜前に生じた増殖膜が網膜を持ち上げ、牽引性の網膜剥離になります。

蛍光眼底撮影にて血管閉塞、新生血管を認めたら、汎網膜光凝固をまず行わなくてはなりません。硝子体出血、牽引性網膜剥離は硝子体手術の適応となります。

特に、若年で発症する1型(インスリン依存型)では、罹患期間が長くなるだけに、眼科的予後不良例も多くなります。

まずは適切な全身管理が不可欠です。2型糖尿病の多くはいいかげんな全身管理が全身状態の悪化、失明につながってしまいます。

最近、増殖型糖尿病網膜症に対して、抗VEGF抗体が有効であることがわかっています。一部の報告では、汎網膜光凝固に匹敵するか、上回る効果を発揮するとされています。ところが、残念なことに、市販されている抗VEGF薬はPDRに対する適応が取れていません。

海外では、学会で効果が認められたとたんに、医師個人の判断で新しい薬を使用することが普通に行われています。医師と患者の双方が納得であれば、どのような治療法も可能です。ただ、その場合、公的保険の適用が受けられませんし、万が一の副作用で国を訴えることももちろんできません。すべて、個人の判断、責任に帰することになりますが、考えてみれば、ごくごくあたりまえの話です。

当院でも抗VEGF薬の適応外使用を行うべく、準備しているところです。


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