メディカルレチナ

昨日は硝子体手術のことを書きました。硝子体手術の器械の進歩は著しく、一昔前よりも安全に出来るようになりました。ところが、抗VEGF薬の普及により、硝子体手術の適応はかなり狭くなっています。

これは、緑内障の分野で、降圧薬の開発により手術に至る症例が減ったことと同じです。

たとえば静脈閉塞症に対する硝子体手術は一時大流行りでしたが、今では、抗VEGF薬による治療が優先されるので、あまり行なわれなくなりました。糖尿病性網膜症についても同じことが言えます。

糖尿病性黄斑浮腫に対しては、光凝固、硝子体手術に加え、抗VEGF薬の眼内注射が治療の選択肢として加わりました。これらの手段のうち、副作用にくらべ効果が著しいのは抗VEGF薬です。安易に手術をしてしまうと、この切り札が使えないということになりかねません。

増殖性糖尿病網膜症に対しても効果がありますので、旧来ならば有無をいわさず手術を行なっていた網膜前出血などの症例でも、まず抗VEGF薬を試すべきと言えます。

抗VEGF薬など、投薬により網膜疾患を治療する分野はメディカルレチナ(medical retina)と呼ばれます。手術を生業とするサージカルレチナと対照され、別の専門分野です。

ここ数年、メディカルレチナの需要が急増しており、眼科医療費を圧迫しています。

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