予防手術後の網膜剥離

今日はお昼から網膜剥離の手術を行いました。眼内レンズが縫い付けてあり、散瞳状態も不良でしたが、BIOMとシャンデリアを併用いたしますと、周辺部の網膜の観察に不自由することはありません。とはいえ、シャンデリアだけでは透明な硝子体の観察が困難ですので、必要に応じて光ファイバーを使います。

大昔は、単眼の倒像鏡で観察しながらクライオあるいはジアテルミーをあてていましたので、術者と助手のコンビネーションが大事でした。70年代終わりごろ、双眼倒像鏡が普及することにより、術者が独りでクライオをあてることが出来るようになりました。シャンデリア照明を併用した硝子体手術による網膜剥離の手術は、その延長にあると言えます。

「裂孔不明例」というのが昔はけっこうの数あったものですが、手術顕微鏡下で拡大して観察できることにより、最近はほとんどなくなりました。バックルやエンサークリングの併置もだんだんと少なくなってきています。

本日の例では、以前レーザーで処置してあった円孔から網膜剥離が生じていました。格子状変性の中の円孔で、硝子体の液化の進行とともに牽引が強くなり、ついには硝子体腔から網膜下へと水が回ったと思われます。

レーザーによる予防が無効であった一例ということになります。

実は、円孔や裂孔に対する予防的なレーザー凝固は、必ずしも万全ではないことがしばしば報告されています。格子状変性や馬蹄型裂孔などの危険因子に対しては、レーザー凝固を行った後も定期的な経過観察が必要です。


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