こんにゃくゼリーの報道

こんにゃくゼリーの窒息事故頻度はあめと同程度」というニュースを昨日読みました。(1月13日19時29分配信 毎日新聞) 国の食品安全委員会の作業班の報告で、「餅が最も窒息事故の頻度が高く、あめ類、パン、肉類...と続く」「事故件数などを踏まえ、危険性はあめ類と同程度と推測できる」という内容で、また「15〜64歳の窒息事故が極めて少ないことから、摂食機能が発達途中の小児や、かむ力が低下した高齢者など『事故の大きな要因は年齢にある』と指摘し、事故防止には食べる際に一口の量を減らすことが重要」と分析しています。
窒息事故については、特にお餅が危ないというのが我々の医療の世界では常識であり、お餅をさしおいて、こんにゃくゼリーばかりで事故や危険性を取り沙汰されることには疑問をもっていました。もしもこんにゃくゼリーを製造販売中止にする必要があるのであれば、お餅にいたってはさらに厳しい対処が必要ということになってしまいます。しかしながら、お餅を糾弾するような記事を見かけることは無く、報道が公平性に欠けているという印象がありました。
今回の食品安全委員会の報告は過去の報道と違って、危険性がどの程度かということについて他の食品と比較した点、また、事故の要因を分析をした上で事故防止のための考察を行っている点を大きく評価したいと思います。
こんにゃくゼリーに限らず、「○○○が危険!」といった記事はあらゆる分野で見かけますが、単に危険と言うだけであれば簡単であり、例えば食品アレルギーを起こすことがある小麦や卵さえも「危険」になってしまいます。
医療の分野でも同様で、薬や手術の危険性がたびたび記事になりますが、どんな治療においてもある程度の副作用、合併症は起こりうるものです。このデメリットを治療のメリットが上回ると判断した場合に私たち医療者は治療を行います。ですので、デメリットのみを取り上げて「危険」と糾弾するだけの記事は無意味で、いたずらに患者さんの不安を煽るだけです。メリットを含めて他の治療法と比較し、その上できちんと分析や考察を行った記事を期待したいと思います。

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