新しい器械

日進月歩の眼科臨床では、10年もすると器械やそれに伴う手技が時代遅れになることが多いです。大抵の器械は新型が売り出されると旧バージョンは補修ができなくなりますので、買い替えざるを得ません。新しい器械はもちろん性能がアップしていることは間違いありませんが、慣れ親しんだ旧型からの移行には、若干のラーニングカーブがあります。コロナ後、このような器械の交代が相次ぎましたので、とてもストレスが溜まりました。

 

超音波白内障手術装置はアルコンのインフィニティからセンチュリオンに交代しました。前者は先の曲がったケルマンチップが売りで、とても使用感が良かったのですが、後者では同じチップも使えるものの、新たに開発されたグニャグニャのストレートチップが本命であり、こちらに慣れていかなければなりません。センチュリオンでは術中の前房圧が厳格にコントロールされる特長があり、眼圧を下げることにより患者さんの痛みが減少いたします。これは大きな進歩です。

 

また、手術用顕微鏡はライカのM-844から プロヴェオ8に交代しました。光源、レンズ、架台の全てが一新されており、非常に明るく、見やすくなりました。こちらに慣れてしまうと、前の顕微鏡ではCCCがとても難しく感じることでしょう。CCCのちょっとした亀裂やトーリックIOLのマークもとても良く見えます。

 

後嚢もよく見えますので、後嚢磨きを安全に行えることは、術後視力の向上につながります。硝子体手術用の眼内観察装置も改良され、前置の直像レンズを置かなくてもピーリングが可能になりました。

 

外来ではMGD(マイボーム腺機能不全)の診断と治療のため、イナミ社のアイドラとルミナス社のM22(IPL治療装置)を導入します。これは楽しみです。

 

MGDというと難しく聞こえますが、要はドライアイの治療ということで、中年以降によくある「眼がクシャクシャする」とか「疲れる」「痛い」「開けてられない」とかの症状を緩和する治療になる可能性があります。外国の患者さんは「My eye is cracking!」とか訴えます。亀裂が入るとは大げさですね。

 

MGDは経年変化(老化)ですので腺を復活させることはできませんが、IPL(Intense Pulsed Light)では眼周囲を光で刺激して温め、血流を促し、残ったMGの機能を活性化します。MGDおよびドライアイの治療として米国FDAで認可されており、日本でも最近認可されました。

 

ただし、アイドラおよびIPLは自費診療になります。週1ペースで3回をワンクールとして治療計画を立てます。治療の前後にアイドラでドライアイの定量診断を行います。

 

8月後半から開始する予定で、お値段についてはそのうちホームページで公開いたします。

 

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