アイドラ

出入りの業者さんに教えていただいて、ドライアイの治療として注目されているIPLを何度かお借りし、試してみました。この話を家内にすると、「そんなもん、前から皮膚科では常識やで」とのことで、シミと脱毛の治療として大活躍中とのこと。そう言えば、すぐ前のビルにも「永久脱毛〜円」とか宣伝していたのを思い出しました。眼科への適応はたまたま見つかっただけのようです。

 

とは言え、何故これがドライアイの治療になるかということを調べると、なかなか奥深い話が潜んでいます。涙は食塩水に似た水分だけではなく、眼周囲の皮脂腺(マイボーム腺)から分泌される脂肪成分が含まれており、これによって開瞼時の蒸散を防いでいるのです。加齢などでマイボーム腺が減少すると脂肪も少なくなってしまうので、ドライアイになりやすくなります。

 

IPLの普及により、ドライアイの診断機器も進歩してきました。今週試用している「アイドラ」という器械では、涙の表面の脂肪層の厚み(LLT)を測定することができます(インターフェロメトリー)。同時に、涙液全体の厚み、BUT(開瞼を続けることにより涙層が破壊するまでの時間、3秒以下でドライアイと診断される)、瞬きの質、そしてマイボーム腺の観察もこれ1台で可能です。

 

マイボーム腺が少なくなると、涙表面の脂肪層の厚みも少なくなり(Meibomian Gland Dysfunction=MGD)、IPLの適応になってきます。いわば、アイドラはドライアイの治療法を提案することのできる検査機械です。

 

ご夫婦で毎回大量にヒアレイン点眼を購入しておられるご高齢の患者さんにアイドラをしたところ、奥様はインターフェロメトリー正常、旦那さんはLLT異常で蒸発亢進型ドライアイということが分かりました。早速、旦那さんには、薬局で売っている温罨法をお勧めしました。MDGの治療としてはIPLのほか、温罨法も推奨されているからです。

 

そう言えば、私が子供の頃、めばちこ麦粒腫=マイボーム腺の感染)になると近所の眼科で温罨法をしてもらった記憶があります。昔眼科がレッドアイクリニックだった頃は、温罨法はとてもポピュラーな治療法でした。半世紀の時を経て、ドライアイで復活を遂げるのでしょうか。

 

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