網膜剥離手術の時期

最近、網膜剥離の手術を多く手がけています。今週も2例の手術がありました。網膜剥離といえば眼科で緊急手術の代表ですが、実際のところ、発見したらその場で手術(即日手術)というわけではありません。

 

予後を大きく左右する因子は黄斑部が剥離しているがどうかということです。網膜剥離は一般的に網膜の周辺部(前方)に網膜裂孔ができて剥離が発症し、後ろの方へ広がっていきます。剥離が黄斑部に達するまでには時間がかかります。この間は、矯正視力が低下することはありませんが、飛蚊症が増えたり、視野の欠損を自覚したりと異変に気付かれる患者さんも多いのです。

 

1)裂孔形成→2)裂孔周囲の剥離→3)黄斑に達する→4)全剥離という経過のうち、1)か2)で治療ができれば正常な視機能を維持することができます。1)はレーザーで治療できる場合もあります。

 

ところが3)になると、たとえ即日に対処したとしても、ものが歪んで見える変視症が残ることがあります。ただ、視力に関しては黄斑剥離すると直ちに失うのではないことは、慢性的に黄斑剥離をきたすにも関わらず視力予後が良好な中心性網脈絡膜症を見ても明らかです。

 

結局、網膜剥離は、黄斑剥離をきたしていない場合は黄斑剥離に至るまでの期間に手術をする必要があります。ギリギリのところまで達しておれば、即日対処も必要になってきます。周辺部に限局している場合は、レーザーで囲んで手術せずに経過観察するのもありです。

 

発見時に黄斑剥離を認める網膜剥離は即日の対処は必要ありませんが、1週間以内の手術が望ましいと思います。手術では硝子体切除とガスタンポナーデにより、瞬時の黄斑復位を目指すのが良いと思います。

 

網膜剥離手術は白内障の5件分、緑内障の2件分の時間がかかります。そのうえ、症例によって微妙に対処方法が異なるので、ゆっくり考えながら手術を行います。緊急性にとらわれて焦るよりは、じっくり計画をたてて余裕をもって手術に臨む方が、良い結果が得られます。

 

目指すのは初回手術の復位率(治癒率)90%以上です。

 

ST