網膜剥離手術

昨日は網膜剥離手術が2件ありました。どちらも輪状締結+PPV+PC+ガスの手術を行いました。手術時間は1例につき1時間くらいかかります。

 

網膜剥離は昔は入院加療の対象でしたが、今では日帰り対応する施設も増えています。入院させていたころの術式では術前、術後の安静が必要だったからですが、今では硝子体手術(PPV)による術中復位が基本となり、安静をそれほど必要としなくなったのです。

 

網膜剥離とは網膜に孔があいて(裂孔)、脈絡膜と神経網膜の間に硝子体液が流れ込み、神経網膜が剥離する病気です。孔が開く原因の多くは硝子体の牽引です。放置すると自然に治ることはほとんどなく、失明に至ります。裂孔を再度元の位置で脈絡膜とくっつける(裂孔閉鎖)手術により復位いたします。

 

その方法はレーザーまたは冷凍凝固などで裂孔周囲に瘢痕を作ることと(凝固)、物理的にくっつけることの両方が必要です。後者の方法は二つあり、一つは裂孔の位置の強膜にスポンジなどを縫い付けて内側へ膨らませる方法(バックリング)。二つ目は硝子体腔にガスやシリコンオイルを入れて内側から網膜を膨らませる方法です(タンポナーデ)。昨日の手術ではバックリングとPCとガスタンポナーデを併用したというわけです。

 

網膜剥離の状態によってはガスタンポナーデとPCのみで対処できることもあります。バックルを省略することにより、手術時間の短縮、痛みの軽減、屈折変化の防止などの利点がありますが、一度の手術による復位率は悪くなりますので、慎重な判断が必要です。

 

ガスが消失するまでに2~3週間かかります。一方、PCによる瘢痕形成には10日ほどかかります。裂孔周囲の瘢痕が完成するまでガスで裂孔周囲が押さえられるためには、裂孔が真ん中よりも上に位置している必要があります。逆に言えば、上に開いた裂孔による網膜剥離は、ガスタンポナーデ+PCのみでも復位する確率が高いです。

 

逆に下の裂孔、多発裂孔、裂孔が分かりにくいなどでは、最初からバックリング(輪状締結)を併用したほうが確実です。

 

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