コロナ後の眼科医療の充実

昨年2023年の診療(手術)実績を見ると、アイステントが96件と過去最高でした。この手術はほぼ白内障手術との同時で行われておりますので、母数は「単焦点レンズを用いたPEA」の1081例です。ということは、白内障手術の10件に1件でアイステント併用手術が行われたことになり、この割合は60才以上の世代におけるPOG(開放隅角緑内障)の有病率とほぼ一致しています。

 

当院では白内障手術希望者がPOGと診断された場合、アイステント併用手術を強くお勧めしています。アイステントにより、1)術後の眼圧を平均して25%下げることができ、2)70%の症例で緑内障点眼薬を止めることができています。ただし、これは術後1年の経過観察によるデータであり、更に経過すると点眼再開や濾過手術追加の症例が増えてくる可能性もありますが、それにしても、目覚ましい治療効果といえます。

 

昨年は硝子体注射も過去最高の件数で(319件)、多焦点IOL(187件)や硝子体手術(121件)もコロナ後最高でした。多焦点IOLはコロナの始まったころ選定療養に変わり、自己負担金が増えました。それ以前は先進医療ということで、実質的には民間の保険が代金を支払っていたのでした。自己負担にもかかわらず多焦点IOLが増えたのは、認知度が上がってきたことのほか、次々と新しいIOLが発売され、いずれも評判が良いことが理由と思います。混合診療が成功したことは、今後の医療制度を考える上で参考になるでしょう。

 

屈折矯正の分野ではICLやIPCLといった有水晶体眼内レンズが増加傾向です。多焦点IOLも含めると、水晶体関連の屈折矯正手術(水晶体手術)が増えてきていることになります。

 

また、ドライアイや霰粒腫に対するIPL治療も始まりました。コロナが終了して、眼科医療がますます充実してきていることを実感しています。

 

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