白内障手術の時期

「もう手術の時期ですか?」とはよく聞かれることばです。白内障は慢性かつ良性の疾患で、不便を我慢すればいくらでも放置できます。「即手術です!」となるのは、水晶体がはずれていたり(水晶体脱臼)眼圧が上がっている(悪性緑内障)場合などで、そうそう多いわけではありません。

 

しかし視力の低下が加齢と重なってQOL(生活の質)の低下、ADL(日常生活機能)の低下、情動、認知機能の低下につながることを思えば、なるべく早い機会に手術を受けていただきたいと思います。

 

メガネをかけた視力(矯正視力)がそれほど落ちていない場合は慌てて手術する必要はありませんが、眼の状態によっては、それでも手術を急いだほうがよい場合もあるのです。

 

特に大事なのが、緑内障関連の白内障手術です。その1)は隅角が狭い場合。隅角は角膜と虹彩の付け根の部分で、ここから眼内液が排出され、眼圧が調整されています。隅角が狭くなって角膜と虹彩がくっつくと流出路が絶え、急激に眼圧があがります。これを急性緑内障発作(AAC=Acute Angle Closure)と呼びます。

 

白内障手術を行うと隅角が拡がりますのでAACの発症を予防できます。隅角が狭く、AACになりそうな状態をPACS(Primary Angle-closure Suspect)と呼びます。PACSでは早めの白内障手術が望ましいのです。

 

その2)は一般の緑内障POG=Primary Open-angle Glaucoma)の治療としての白内障手術です。白内障手術単独でも眼圧が下がる傾向にあることはよく知られていましたが、その際同時に流出路を改善すると降圧作用が高まります。

 

流出路改善の方法はいろいろありますが、4年前に保険適用されたアイステント(グラウコス)が優れています。これはごく小さなシャントをトラベクルムに差し込んで眼外へ向かう水の流れを作る方法です。それほど時間を取らず、損傷が少なく、出血も少ないですので、通常の白内障手術と同じような感覚で手術を受けていただけます。

 

それでいて眼圧下降作用はローティーン(15mmHg以下)を目指せるほどですので、初期〜中期のPOGの患者さんには是非ともお勧めしたい手術方法です。

 

ST