網膜裂孔、剥離

先週あたりから朝晩めっきり涼しくなりました。一日の気温差が10℃以上のこともしばしば。こんな季節になると増えてくるのが、網膜剥離、網膜裂孔、硝子体出血などです。

 

硝子体は若い頃は眼内を充満し、網膜を隙間なく押し付けていますが、年齢とともに一部が液化し、繊維だけが残って容積が減り、平均60歳くらいで網膜面から外れ、前方に移動します。硝子体剥離です。しかし、赤道部より周辺(前方)では硝子体が剥離することはありません。

 

硝子体は周辺部〜毛様体扁平部で網膜と強く癒着しています。この部分を硝子体基底部(ベース)と言います。硝子体が剥離する際でも基底部では網膜と固着しているため、剥離部と基底部との境界で網膜が引っ張られることになります。

 

この部分で格子状変性や色素沈着で網膜が弱く、薄くなっていると、硝子体牽引により網膜が破れます。これが網膜裂孔です。網膜裂孔から硝子体液が網膜下に入り込むと網膜剥離になります。

 

網膜裂孔を見つけたら、網膜剥離の予防のためにレーザー光凝固を行うのが普通です。しかし、剥離の範囲が大きくなってくるとレーザーだけでは治療できなくなり、手術が必要になります。

 

手術では牽引の原因となる硝子体を可能な限り除去した後、空気を持続的に注入して網膜を復位させ、裂孔の周囲をレーザーで凝固します。次に、吸収されにくい特殊なガス(20%SF6など)で置換し、術後2週間くらい裂孔を押さえるようにします。

 

この間に裂孔周囲の光凝固が瘢痕化し、網膜と脈絡膜の癒着が完成すると網膜剥離は完治します。しかし、その前に姿勢の維持が不十分だったり、ガスが早く無くなったりして再剥離する場合もあります。

 

一度の硝子体手術で復位(治癒)する確率は大体80%くらいと報告されています。再剥離した場合、二度目の手術ではバックル(強膜内陥術)を追加するのが普通です。

 

ガスの量が不十分な場合、術後にガスを追加注入して再剥離を防ぎます。これは外来でできる処置です。

 

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