単焦点IOLの選択

眼内レンズ(IOL)にはいろんなメーカーからいろんなレンズが発売されています。このうち多焦点IOLについては、選定療養でレンズにより価格が異なるため、各レンズの特徴を理解して自分に合ったレンズを選択していただくことになっています。しかし、単焦点IOLは保険診療の中に組み込まれており、自己負担はどのIOLでも一緒であり、患者さんに選択していただくことは原則、ありませんでした。

 

では、医療機関はどんな基準で単焦点IOLを選択しているのでしょうか。医療機関にとっては仕入れ原価が安いレンズほど利益が出ることになりますので、メーカーと交渉してなるべく安いレンズを探し、それを選択するというのが経済合理性があります。一昔前ならそれが当たり前だったと思います。

 

しかし、最近は単焦点IOLでも患者さんに合ったレンズを選択するというのが主流になってきています。

 

眼のレンズを構成する要素は角膜と水晶体です。それぞれ屈折パワーの2/3と1/3を受け持ちます。全体として一つのレンズになりますので、IOLの場合、角膜との相性が重要になります。

 

術後に全体としての乱視を残さないため、角膜の乱視が強い方ではIOLでその乱視を打ち消すことにより(乱視矯正)術後の裸眼視力がアップいたします。これがトーリックIOLです。

 

また、角膜の球面収差(レンズの中央部と周辺部との屈折力の差)も個体差があり、術後の見え方を考えると、適正な値の収差に落ち着くようにIOLを選択するという考えがあります。というのも、製品によって球面収差の補正量が異なるからです。

 

ごく最近、負の球面収差により焦点深度を膨らませたIOLが発売されました。これにより多焦点IOLほどではありませんが、遠く〜中間、あるいは中間〜近くとやや幅広い深度が期待できます(AMO社アイハンス)。

 

単焦点IOLの選択は角膜との相性が大切であり、角膜の光学特性を正確に測定する必要があります。そのために、現時点で最も優れた検査機器の一つが、当院で使用している前眼部OCT CASIA2 Advanceです。これがあれば、IOLの選択は自由自在です。

 

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