白内障手術と乱視

乱視とは球面レンズで形成されるべき光学系に円柱レンズ成分の歪みが入ることです。ヒトの目では角膜および水晶体が光学系で、そのそれぞれに乱視成分が入りえます。円柱レンズで矯正される乱視を正乱視、されない乱視を不正乱視と呼びますが、一般的に乱視といえば正乱視のことを指します。

 

乱視があると球面成分を矯正してもボケが残ります。術後の裸眼視力を上げるためには、乱視が少ないほど良く、具体的には1D(ディオプター)以下が望ましいのです。多焦点レンズでは更に少なく、0.75D以下が推奨されています。

 

白内障手術では水晶体を摘出しますので、水晶体が原因だった乱視は矯正されます。しかし、普通のIOLでは角膜起因の乱視が残ります。角膜乱視が強い症例で術後の(全体)乱視を少なくするためには、乱視矯正のはいったIOLを用います。これをトーリックIOLといいます。

 

多焦点はもちろん、単焦点IOLでもトーリックが用意されており、保険適応になっています。(多焦点IOLは別途選定療養の費用がかかります)。術後1.5D以上の乱視が残るのを避けるため、当院では単焦点IOLでも積極的にトーリックを使用しています。

 

1.5D以下の軽い角膜乱視の場合、切開を工夫することにより矯正できます。これを強主経線切開法と呼びます。トーリックIOLとちがって軸ずれの可能性がなく確実ですので、軽い乱視ではこちらのほうが有用です。

 

軽度角膜乱視=強主経線切開、高度角膜乱視=トーリックIOLということになります。

 

強主経線切開法に習熟することにより、トーリックが提供されていない多焦点IOLでも適応範囲が広がります。テクニスマルチなどです。

 

トーリックIOLと強主経線切開を駆使して、術後に残る乱視を極小化すれば、裸眼視力が向上し、患者さんの満足度を上げることができます。

 

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