Ophthalmology Aug 2020

コロナで学会もウェブ開催がほとんどになりました。面と向かっていろんな人にお会いできないのはちょっと寂しいですが、ウェブでも知識を得るという点では全く遜色ありません。それどころか、複数の会場で行われている講演を全て見るのは、ウェブでない限り無理です。また、データをじっくり吟味できるのは、ウェブならではの魅力です。

 

専門的な知識は日々更新しなければなりませんが、頼りになるのが学術雑誌(ジャーナル)です。ちゃんとした査読(peer review)のある雑誌の記事以外は信用できません。素人の意見ではなく、その道の専門家同士で批判しあって初めて、まっとうな意見かどうか判断できるのです。

 

アメリカからOphthalmologyとJCRS(Journal of cataract and refractive surgery)は毎月送ってきますし、AAO(American Academy of Ophthalmology)とASCRS(American Society of Cataract and Refractive Surgery)の会員ですから、それぞれ毎日のようにニュースレターをメールしてきます。これらの中に眼科医にとって大事な情報は大体含まれているのです。

 

今月のOphthalmologyでも面白い論文がいくつかありました。まず中高年の難治ではない網膜剥離について、初回手術で硝子体手術(PPV+ガス+PC)、バックリング(+冷凍凝固)、その両方の3群に分け、1回の手術での復位率を調べると、PPVではほぼ80%であるのに対し、バックリングを初回から加えた場合、90%と有意に良好だったそうです。

 

これは、我々の実感とほぼ一致します。ただし、これだからPPV単独が悪いということにはなりません。PPV単独手術では、初回復位率が悪いとはいえ、時間が短い、痛みが少ない、屈折変化が少ないという患者さんにとっての利点があるからです。明らかに難治ではない限り、初回のバックルは避けるのが良いと思います。

 

フェムトセカンドレーザーを用いた白内障手術と通常の超音波白内障手術の比較は、今年のはじめにLancetに出て、大いに注目されましたが、他の施設(英国)から同じような報告があり、ここでも、臨床経過における有意な差はなかったことが今月号のOphthalmologyに掲載されています。

 

関係するメーカーには気の毒な結果ですが、事実は事実として認めなければならないでしょう。

 

フェムトはLASIKのフラップ作成では大いに威力を発揮していますが、白内障手術におけるCCCはそもそも人間の手で十分正確に作成可能ですので、わざわざ器械を持ち出すまでもなかったということでしょうか。

 

ST