急性緑内障発作

前回のニュース「緑内障の手術」における緑内障とは、正確には「開放隅角緑内障」(Primary Open-Angle Glaucoma, POAG)と呼び、普通に緑内障と言えばこれを指します。

しかし、ややこしいことに、「閉塞隅角緑内障」(Primary Angle-Closure Glaucoma, PACG)という全く別の疾患があり、よくPOAGと混同されます。

眼科医から「あなたは緑内障になりやすい眼なので、早く白内障手術をした方が良いです」という説明を受けることがあるかと思いますが、この場合の緑内障とはPACGのことで、正確には、「隅角が狭いので急に眼圧が上がる危険がある」ということです。

隅角が狭く、時々つまり、眼圧上昇を繰り返しているうちに、一部が癒着し、慢性的に眼圧が高くなり、神経が痛むというのがPACGですが、白内障手術が普及するとともに、そこまで行ってしまう患者さんはほとんど見なくなりました。PACGは今やほとんど死語です。

とはいえ、狭隅角で眼圧上昇の危険があるのに、なかなか白内障手術に踏み切れず、発作を起こしてしまう患者さんは時々おられます。隅角閉塞により急激に眼圧が上昇し、頭痛、嘔吐などの症状が出る、いわゆる「急性緑内障発作」です。急性緑内障発作は、一旦発症しますと緊急手術の対象になります。

手術は白内障手術(眼内レンズ挿入術)です。ただし、眼圧が高いままでの手術になりますので、硝子体切除を併用しなければなりません。水晶体を摘出し、眼内レンズに交換することにより、隅角が広くなって、眼圧が正常化します。

老眼が始まる40代後半以上の年齢の方ならば、白内障の有無にかかわらず、水晶体を取るデメリットがありませんので、狭隅角を見つけたならば、ためらわずに白内障手術を受けるのが良いです。

グズグズしていると、虹彩が癒着して眼圧が戻らなくなってしまいます。その場合の手術は、白内障手術のみならず、隅角癒着解離術(Gonio-Synechiolysis, GSL)をも行わなければなりません。

閉塞隅角により急激な眼圧上昇を来したとしても、早期に手術治療をすれば視神経には障害を残しません。視神経障害=緑内障になる前に食い止めることが出来ます。急性緑内障とは言っても、本当の緑内障(POAG)よりもよほど与し易い疾患と言えましょう。

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