緑内障だから白内障手術??(1)

緑内障になりそうだから、白内障手術をしましょう!」とは眼科医ならばその意味が理解できますが、一般の患者さんはちょっと引いてしまうことが多いようです。実際、そう言われたけど本当か、と来院される患者さんが後を絶ちません。自分は本当に緑内障なのか、あるいは緑内障とするとなぜ白内障手術なのか、と疑問が生じるのは当然でしょう。

 

本来ならばこれは「狭隅角だから白内障手術で治しましょう」というべきところですが、「狭隅角、なんじゃそれ」となるのは必定ですから、狭隅角という代わりに「緑内障になりやすい」と言いかえて、さらに話が混乱することになるのです。

 

狭隅角(NA=narrow angle)とは周辺部角膜と虹彩根部がくっつきそうになっている状態です。これが本当にくっつきますと、眼房水が出て行くところ=シュレム管がふさがってしまい、眼の中に水が溢れて、眼圧が急上昇します。これを急性緑内障発作、より正確には急性隅角閉塞(AAC、acute angle closure)と呼びます。放置すると高眼圧のため視神経が圧迫され、萎縮して本当の緑内障になってしまいます(閉塞隅角緑内障、PAG=primary angle-closure glaucoma)。

 

急激に眼圧があがる発作の段階では視神経委縮は認めず、したがって緑内障ではありません。緑内障=あおそこひ=視神経委縮のことですから。よって、従来からよく用いられる急性緑内障発作という用語よりは、急性隅角閉塞と言う方が正確です。AACになって放置すると短期間でPAGになるので、NAの段階で治療するほうが良いのです。

 

NA→(突然)AAC→(短期間で)PAGという図式です。

 

体質的、慢性的に視神経障害が進む通常の緑内障=開放隅角緑内障POG、primary open-angle glaucoma)とは全く別の疾患です。普通に「緑内障」といえばPOGのことです。

 

NAの治療は、かっては周辺虹彩切除、特にレーザー虹彩切除(LI)が一般的でしたが、LIによる副作用として角膜内皮細胞の減少による角膜混濁が見られることから、60歳以上では白内障手術の方がより安全で優れていることが認められ、標準的に行われるようになったのです。

 

NAがAACやPAGになる前に予防的に白内障手術を行なわねばなりません。白内障の混濁、矯正視力低下がさほどではなくとも、手術適応になります。NAは遠視眼に多く、若い頃は眼が良かったとの思い込みがありますので、なおさら、「手術」と聞いてびっくりされることが多いです。

 

NAの診断は前眼部OCTカシア2で行います。隅角の狭さを数字で表すことができますので、確実です。これを隅角パラメーターと呼びます。当院ではパラメーターに一定の基準を設けて、手術の必要性を判断することにしています。角度が20°以下になったり、前房深度が2mm以下になると要注意です。

 

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