急性緑内障発作の手術

コロナによる3〜5月の受診抑制の反動か、ここ数ヶ月、比較的重症の患者さんが目立っています。白内障だと両眼の視力低下、過熟白内障緑内障だと隅角が閉塞して急激に眼圧が上がる急性緑内障発作、眼底では未治療の糖尿病による増殖性変化、硝子体出血などです。IOL脱臼も多いです。

 

急性緑内障発作 (Acute Angle Closure、AAC) は遠視眼で眼軸が短い場合に多く、年齢とともに水晶体が分厚くなり、隅角が狭くなってきているところで、ある日突然、頭痛がするほどの高眼圧になる病気です。50mmHg以上になることもあります。

 

慢性的に眼圧に負けて視神経が傷む普通の緑内障 (Primary Open-angle Glaucoma、POG)とは全く異なる疾患です。AACも放っておくと視神経萎縮に至り、失明する危険があります。

 

点眼薬や内服薬で眼圧を下げても効果は一時的であり、手術で隅角を解放しなければ治りません。AAC網膜剥離などとともに、緊急手術の必要な眼科疾患の代表です。ここ2週間で立て続けに2例4眼を経験しました。

 

治療法は、4〜50年前では周辺虹彩切除術(PI)、2〜30年前ではレーザー周辺虹彩切除術(LI)が定番でしたが、白内障手術に眼内レンズが導入され完成されてくると、前2者よりも白内障手術の方が予後が良いことが認められ、今では白内障手術が標準となっています。

 

とはいえ、眼圧が高いままでの手術は普通の方法では困難であり、硝子体手術と併用して眼圧をコントロールしつつ白内障手術を行います。

 

また、すでに隅角の癒着が見られることも多いので、上記に加えて隅角鏡を用いた癒着解離術 (Gonio Synechiolysis、GSL) を合わせて行います。水晶体摘出、IOL挿入、硝子体切除、GSLと、いわば4重手術になります。

 

京都府医大の森先生が開発したゴニオレンズとスパーテルがこの手術ではとても有用です。正面視で隅角の全周を観察しながら、簡単に隅角癒着を剥離することができます。

 

私が前職の折、緑内障で名高い天理の故永田誠先生に教えていただいたGSLは、スワンーヤコブの隅角鏡を把持しながら、永田式のスパーテルを用いる方法でしたが、なかなか難しい手術でした。大事にとってあったSJ隅角鏡も、つい先日、とうとう処分してしまいました・・。

 

ST