谷戸式ロトミー

昔から緑内障手術ではトラベクロトミー(流出路再建術)が好きでした。濾過手術ほどの効果はありませんが、副作用が少ないからです。

 

古典的なロトミーは京大系の先生方がお好きで、大学にいた頃、阪大では見たことがありませんでした。私は1990年ごろ、勤務していた病院に、ラッキーなことにその道の権威者である故永田誠先生が顧問としておられましたので、直接教わる事ができました。

 

永田先生の方法は結膜を切開して強膜半層切開を行うという、濾過手術と全く同じような手順で、トラベクルムを探し出し、60度くらいを切開するというものでした。

 

眼圧は20mmHg以下にコントロールされ、点眼薬の本数を減らせますし、術後1年くらいは効果が持続いたします。

 

ところが、その後、同じ手順でより簡単な濾過手術に、抗がん剤を塗布して良い成績を出す方法が定着し、最近ではエクスプレスというデバイスが開発されたりしたので、京大式ロトミーはほとんど行わなくなってしまいました。

 

濾過手術は手術直後に眼圧を10mmHg前後にまで下げる事ができ、NTG(正常眼圧緑内障)でも行える利点があります。この効果が持続すれば点眼薬が要らなくなるほどですが、残念ながら長くは続きません。創傷治癒とともに濾過胞がなくなると眼圧下降作用もなくなってしまうからです。

 

最近は、島根大学谷戸正樹先生が開発された、マイクロフックロトミーに注目しています。白内障手術と同じ角膜切開創から、ゴニオスコープで観察しながら、眼内からトラベクルムを切開する方法です。

 

この方法の利点は侵襲が少ないことのほか、トラベクルムを広い範囲で切開できる事が挙げられます。京大式だと60°くらいでしたが、谷戸式だと180°以上でも簡単に切開できます。この違いは大きいです。

 

谷戸先生のお話では、ローティーンは無理ですが、15mmHgくらいの眼圧なら安定して目的を達成できるそうです。

 

どの程度の期間効果が持続するかは、今後の検討を要します。

 

ST