脱臼水晶体の手術

今週の月曜日、水晶体脱臼に対する硝子体手術を行ないました。

水晶体脱臼とは、チン氏帯によって支えられ、虹彩の後ろに位置する水晶体が支えを失ってグラグラになり、視軸からはずれ、場合によっては硝子体腔に落下している状態です。まれに体質的なものもありますが、大抵は、外傷(眼の打撲)が関係していることが多いです。

はずれた水晶体を中身ごと取り出し、IOLは毛様溝に強膜内固定といたします。強膜内固定については当ブログでも書いていますとおり、数年前より、縫合固定に代えて行なっている方法です。慣れれば、こちらの方が安全で、術後の経過も良好です。ただ、いろいろとコツや解決すべき点もあります。一般に普及するにはもう少し時間がかかるでしょう。

脱臼水晶体の処理は、硝子体腔内で行ないます。硝子体手術です。普通のカッターでは水晶体を砕くことは出来ませんので、白内障で用いる超音波チップを使います。

現在白内障に使用しているチップは、21Gの強膜創から挿入できます。もちろんトロカールは使えません。コンステレーションに付属するアルコン社のオジルチップは、水晶体を吸引しつつあまり弾きませんので、硝子体腔での水晶体粉砕除去に適しています。縦振りを少なく、横振りを多く設定します。核片を吸い付けて、網膜前から遠いところへ移動させ、超音波をかけます。

左手で硝子体カッターを持ち、水晶体を支えたり、周辺の硝子体をかじったりします。シャンデリア使用の双手法です。

昔のフラグマトームを用いた手術にくらべ、効率は抜群で、手術時間も相当に短くなりました。IOLの強膜内固定を含め、1時間くらいで終了です。

脱臼水晶体は、傷を大きくあけてそのまま取り出す方法もありますが(ICCE)、硝子体手術による処理のほうがはるかに安全で、仕上がりも奇麗です。

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