水晶体脱臼の手術

通常の白内障手術では水晶体の中身を取り除いた後、水晶体の袋(嚢)の中に眼内レンズ(IOL)を入れます。これがIOLの嚢内固定です。しかし、水晶体が嚢ごと外れていると、この方法ではIOLを挿入できません。水晶体を支えるチン氏帯が弱くなっている場合です。

 

マーファン症候群、落屑症候群(PE)、外傷などでチン氏帯脆弱をよく見かけますし、閉塞隅角による急性眼圧上昇(Acute Angle Closure、急性緑内障発作)の症例でも水晶体脱臼を伴っていることがよくあります。

 

水晶体が脱臼していると、通常の方法の超音波摘出が難しくなり、水晶体を硝子体中で処理しなければならないことがあります。その場合でも、超音波チップを硝子体腔に射し込んで、切削、吸引、除去することができます。これをフラグマトームと言います。当院で使用している硝子体手術装置(Constellation、Alcon)のケルマンチップは、フラグマトームの能率がとても良いのが特徴です。

 

水晶体を取り除いたらIOLの挿入ですが、嚢がありませんので強膜に固定する方法を用います。ループを縫い付ける方法、ループの先を強膜に差し込む方法などvariationがいくつもありますが、最も優れていると思うのが山根法です。

 

山根法は世界的に有名な強膜内固定法です。一度慣れてしまうと、安全性、確実性、簡便性から、他の方法に戻れなくなってしまいます。

 

脱臼水晶体やIOLの手術を積極的に行おうという気持ちになるのも、山根法があるおかげです。山根法だとIOLの挿入に要する時間は10分ほど。それでいて、挿入直後にガスタンポナーデが可能なほどにIOLの固定は安定しています。

 

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