老人環+固視不良=?

2/24の当ブログ内でご紹介した「老人環」の続きです。
前回も述べたとおり、老人環は角膜の周りの混濁で、あまり心配のないものです。普段の診療においてもほとんど気にかけることもありません。
ところが、これに思いがけず悩まされる一件がありました。
白内障手術において、通常であれば老人環はほとんど問題になりません。ところが、この日のある患者さんは老人環の濁りが強いのに加えて、全く正面視できなかったのです。
手術の始まりから終わりまでずっと、正面を向けずに強く上を向きっぱなしでした。必然的に、角膜周辺部から眼内を見る角度で手術することになりますが、いかんせん、角膜周辺部は老人環で濁っています。
なるべく透明なすき間から眼内を覗き込みながら、手先の感覚にも半分くらい頼りつつ、とにかくゆっくりと安全に手術することを心がけました。手術は無事に終了しましたが、肝を冷やす思いをしました。
もちろん、本当に手術が続行不可能なくらいの状態であれば、瞬目麻酔、牽引糸、シャンデリア照明によるレトロイルミネーションなどの工夫で何とかなりますが、これらは患者さんに痛みを伴ったり、手技が煩雑になったりするので、なるべく避けたいところです。
本日のタイトル「老人環+固視不良=」の答えは「白内障手術の難症例」というわけで、難症例の条件とは本当に様々だと改めて実感した一例でした。
一昨日の院長のブログ内容にも通じますが、これからの医療の技術革新は、今回のような思いがけない難症例にも通用するものであって欲しいと思います。
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