iPS細胞

先週(11/11)に書いた今年の臨床眼科学会は盛況のうちに終了しました。
学会会場はどこも大勢の眼科関係者で混雑していましたが、その中でも目玉のイベントである京都大学山中伸弥先生のiPS細胞についての特別講演は特に大盛況でした。
メインホールが満員で入れず、第2会場と第3会場まで使用して実況中継という人気ぶりでした。
山中先生については今さらここに書くまでもないかもしれませんが、2006年にiPS細胞の作製に世界で初めて成功し、今年の文化功労者に選ばれ、早くもノーベル賞候補にまでなっておられる方です。文部科学省からはiPS細胞の再生医療への応用について、今後10年間の道筋を示した「iPS細胞研究ロードマップ」が発表され、まさに国家プロジェクトといえる領域に達しています。

講演では、現在の研究に至った過程や、iPS細胞の応用方法とこれからの展望についてを、目に関するユーモアを交えて語られました。
意外にも、大学院で初めて山中先生が実験を始めた時点では、他の大学院と同じようなごく普通の研究レベルだったとのことです。そこで発見した成果を見逃すことなく、さらに様々な苦労や困難をも克服して、現在のような素晴らしい研究成果を出すに至ったという過程に大変感銘を受けました。
iPS細胞といえば再生医療というイメージを持っていましたが、むしろ新薬開発時に人体ではできないような薬剤の有効性や副作用を評価の方が先に実用化されそうです。これが実用化できれば、例えば新薬に起こりうる副作用をあらかじめ予測できるようになることで、この副作用に苦しむ患者さんが発生することを未然に防ぎ、さらに新薬につぎ込まれる多くの研究者の努力、膨大な研究費や治験費用が無駄にならずに済むようになります。
貴重なご講演をしていただいた山中先生に感謝いたします。
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