白内障手術において手術の良しあしを決定する最も大きな因子が、術後の屈折度数であると言っても言い過ぎではありません。それにもかかわらず、屈折度数(メガネの度数)について、すごく誤解が多いように思います。
「白内障手術をすれば、メガネなしで見えるようになりますか?」という質問をされる患者さんがとても多いからです。
この質問に対する答えはもちろん「No」ですが、それでは、手術を受けた後、「メガネなしで見えるようになった!」とおっしゃる患者さんが多いのはどう説明する?と思われることでしょう。
結論から言うなら、視力といっても人それぞれ、感じ方が異なるのが原因です。
たとえば、遠くの視力が1.0なければ気が済まない人がおられるかと思えば、0.5くらいでも十分と思われる方もおられます。
術前に近視で、遠くの視力が0.1を切っていたような方ならば、術後遠方視力が0.5でも「良く見える!」となる可能性が高いです。
もし遠くの視力が0.5で十分と思える方ならば、屈折度数が−1〜−2Dくらい、つまり、眼前1m〜50cmにピントを合わせておけば、近くもそこそこ見えますから、「メガネが要らない」となるのです。
眼科医療機関の中には、術後の屈折度数を全例−1Dとするところもあるようです。
ところが、遠くの視力1.0の世界に慣れておられる、もともと遠視ぎみの方にとって、屈折度数−1Dはちょっと遠くが見えにくいと感じられることでしょう。
ずばり、二兎を追うもの一兎を得ずということわざの世界です。
正解は、患者さんお一人お一人の事情、ライフスタイル、術前の屈折値などに合わせて、適切な狙いを決定することです。
「どうしても、遠くも近くもメガネなしで生活したい」とのご希望であれば、多焦点IOLまたはモノビジョンを選択しなければなりません。
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