白内障手術後の視力

白内障手術の際、眼内に挿入する人工レンズの度数によって術後の近視や遠視の程度が決まります。
例えば、術前が遠視の患者さんはなるべく正視(遠くにピントが合う状態)に、術前が近視の患者さんは少し近視を残すように人工レンズの度数を調整するのが一般的です。
ただし、現在の医学では若干の誤差が避けられないのが難しいところです。
少しの誤差で視力の数値はかなり変わってしまいます。
それがよく分かる視力の1例をお示しします。
左の数値は矯正視力、右の数値は視力検査時のレンズ度数です。レンズ度数をだんだん強くしながら視力測定してみます。

0.4×-4.5D
0.6×-4.75D
0.8×-5.0D
1.0×-5.25D
1.2×-5.5D

この患者さんが白内障になった時に、「術後は0.8になるようにして欲しい」とおっしゃったとします。
計算上は近視度数-5.0Dを矯正する眼内レンズを入れれば良いことになります。
ちなみに、術後はわずか±0.5D程度ですが誤差が出るのが一般的です。
すると、もしも近視側に0.5Dの誤差が出れば、視力は0.4になってしまいます。「手元はまあまあ見えるけど、もっと遠くを見たかった」と言われるパターンです。
もしも遠視側に0.5Dの誤差が出れば、視力は1.2になります。一見良さげですが、「遠くは見えるけど手元がぼやけて困る」と言われるパターンです。
このように、避けられないわずかな誤差で術後の見え方が意外と大きく左右されます。
次世代の検査機器ではこのような誤差が減らせることを期待しています。
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