黄斑前膜

最近、OCT検査が普及したため、黄斑前膜の発見が非常に簡単になりました。同時に、高齢者において黄斑前膜の頻度が著しく高いことも判ってきました。

従来、検眼鏡所見で「セロファン様黄斑」と称していたもののほとんどが、実は黄斑前膜であることが判りました。小生が卒後数年たった頃(??年前)、勤務していた新設の医大眼科では、カンファレンスで眼底写真をしらみつぶしに見ておりましたが、恩師のO教授は「これはセロファンやな、次」とおっしゃっていました。

とるにたらない所見の代表がセロファン膜と有髄神経線維(fibrae medullae)だったのです。

それからうん十年、眼科の中身は格段に進歩し、セロファン膜が実は黄斑前膜であり、写真で描写できるだけではなく、手術的に取り去ることも出きるようになったとはいえ、「取るに足らない」という事実が消える訳ではありません。

何が言いたいのかと申しますと、明らかな黄斑前膜であっても、(硝子体)手術適応があるとは限らないということです。

矯正視力(1.0)以上で、変視の自覚もない黄斑前膜は手術適応にはなりません。

OCTではっきりと描出され、網膜の内側が盛り上がっている所見を見ると、ついつい「手術!」と口走ってしまいがちです。これは、なんの自覚症状もない患者さんを不安に落とし入れるだけの結果に終わってしまいます。


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