ホロヴィッツの戦前録音

今日はまたまた白内障手術が行われました。

手術の帰り、CDラックをふと見ると、一か月ほど前から探していた「ホロヴィッツ戦前録音集」を見つけました。


これは、ホロヴィッツRCAと契約する前、ヨーロッパでHMV(his master's voice)に録音したSP録音をCDに集成したもので、現在廃盤になっています。これ以降は例の大全集とDG録音集成があれば、ホロヴィッツの録音のすべてとなります。

録音されたのは1930年から1951年にかけてといいますから、ホロヴィッツが27歳から48歳にかけてということになります。30代以前の演奏はここでしか聴けません。

これを聴いていると、ホロヴィッツの本質は終生全く変わらなかったことがわかります。レパートリーもほぼ一緒。ただ、ベートーベンの変奏曲やバッハなど、ここでしか聴けないものもあります。

この時代の特徴は時々ミスタッチがあり、曲の盛り上がりにつれてアップテンポになることです。実は、ライバルとされたルービンシュタインの同じころの演奏も同様で、なかなか興味深い事実です。

ルービンシュタインは若いころの自分の演奏はよくなかったと述べています。レコードに録音された自分の演奏を聴き、修正を重ねて晩年に至ったと書いています。

ホロヴィッツも多分同じことだったのではないでしょうか。考えてみれば、当時は聴衆もレコードに親しんでおらず、演奏会と録音された音楽を比較して聴く習慣がありませんでした。予習なしに聴く演奏会で、多少のミスタッチがあったとて、聴衆はたぶん気付かなかったでしょう。

録音された音源を聴くことがあたりまえになって、ライブはより困難になったと言えましょう。クラシックの独奏会が成り立たなくなっているのも、このあたりに原因があるのかもしれません。

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