今日もお昼から白内障手術が行われました。特に問題なく、終了いたしました。
小さい頃、親にピアノを習わせてもらったおかげで、クラシック、特にピアノ音楽がとても好きです。診察が終わったお昼休みや手術終了後のひと時(すなわち、今)、CDのピアノ音楽がなごみです。
院長室にはCDの他、LP(昔のレコード)を再生する装置もあります。弦の独奏や室内楽はLPの方がよい音ですし、オーケストラも物によってはLPに軍配があがります。たとえば、昔のRCAのリビングステレオやマーキュリーのリビングプレゼンスは、もともとの録音が良かったので、CDやSACDでも再発されていますが、オリジナルLPの音にはかないません。
しかし、ピアノの再生に関してはLPは特に難しく、CDの方が良い音に聴こえます。ピアノは打鍵したあと、音はふらつくことなく減衰します。ビブラートがありません。装置のちょっとした回転ムラが影響して、音が濁ってしまうのです。バイオリンとは正反対の性質です。
特にレコードの場合、内周部になると時間あたりの溝の長さが短くなるので、てきめんに音質が劣化します。その点CDはなんの心配もありません。
今前で鳴っているのはシューベルトの晩年のピアノソナタです(カツァリス演奏)。
前置きが長くなりましたが、今日は好みのピアニストについて書いてみます。
若いころ(1960〜70年代)、ピアニストの有名どころといえば、いわゆる米国系ピアニストとして、ルービンシュタイン、ホロヴィッツ、ゼルキン、カサドジュなどがおり、ヨーロッパ系ではバックハウス、ケンプ、アラウなどが居ました。また「若手」として、アルゲリッチ、グルダ、グールド、ポリーニ、ワイセンベルク、フランソワなどが思いつきます。
「若手」といっても今となってはもう十分におじいさんで、中には亡くなった方も多いです。
名前を挙げた方の中では、ルービンシュタイン、ゼルキン、バックハウス、ケンプ、グールドといったところが好みです。
ルービンシュタインは60年代以降テキストに忠実にかつニュアンスたっぷりに演奏するスタイルに変化しました。これは当時のLPよりもCDのほうがよくわかります。打鍵が強いので、音がつぶれる傾向があったLPよりもCDのほうが聴きやすいのです。うっとりするようなショパン、ベートーベン、ブラームスを聴かせてくれます。
ホロヴィッツは昔からよく聴きました。20世紀に一番人気があったピアニストゆえ、本人が承諾していない録音もCD化されたりしています。しかし結局のところ、この人は大きな作品があまり得意ではありません。たとえばベートーベンのソナタなどは手に余るというか、よい演奏ではありません。早いパッセージや音の跳躍で勝負していたところがあり、作曲者の意図からは逸脱しがちです。自身で編曲した曲が多いのも頷けます。小曲の歌心はすごいですが・・・。
CDでは、ちょっとしたミスが耳に着いてしまいます。勢いのある、しかしやや雑な演奏はCD受けしません。若いころのルービンシュタイン、シュナーベル、ワイセンベルク、それに最近のポリーニなどがそんな感じです。
細部に目の届いた、構成を重視した演奏はCDでの鑑賞によく耐えます。
ケンプ、ゼルキン(ルドルフ)、アラウ、グールドの演奏がまさにそんな感じで、CDでの評価も非常に高いものがあります。
現存するピアニストではシプリアン・カツァリスが一押しです。わくわくするような技巧、あたらしいレパートリーへの挑戦、ライブのすごさなど、過去のどの名演奏家と比較しても優れているのではと思わせるほどです。
ST