PFMSの過剰濾過対策

今年になって始めたプリザーフロマイクロシャント(PFMS)は、週1くらいのペースで着実に症例を積み重ねています。ホームページに書いてますように、これは緑内障濾過手術の1種で、前房と結膜下を交通させる水路のようなシリコン製のチューブです。従来からあったエクスプレスは眼圧調整機能がなかったのに比べ、PFMSは管の長さと内径を計算して、強膜弁を作らなくて済むようになっているところがミソです。

 

とはいえ、術直後はどちらかと言うと眼圧が低くなり過ぎる傾向にあります。前房水が流れ出るスピードが速いと眼圧が下がりすぎてしまい、5mmHg以下になると低眼圧による視力低下(黄斑症)や脈絡膜剥離を来しやすく、予後不良です。通常の(強膜弁を作る)濾過手術では、縫合糸のレーザー切糸により術後に眼圧を調整できることを思えば、PFMSでは過剰濾過の対策が取りにくいのが欠点です。

 

従って、PFMSでは術直後でも眼圧が10mmHgくらいになるのがベストです。過剰濾過を避けるための工夫として、あらかじめPFMSの内腔にナイロンの縫合糸を入れて、蓋をしておく方法があります。術直後の低眼圧を避けることができます。また、眼圧が上がってくるとこの糸を除去することにより、濾過量の拡大が期待できます。しかし、手技がやや煩雑になること、縫合糸を結膜外に露出させなければならないことが欠点です。

 

もう一つの工夫は、PFMSの先端をできるだけ豊富なテノン組織で広く覆うことがあげられます。結合組織でチューブの先に蓋をする結果、いきなり大量の前房水が流出することを防ぎ、過剰濾過を避けることができると考えられます。

 

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