シューベルトのピアノソナター補筆完成版

シューベルト(1797〜1828)は、史上稀に見る多産の作曲家で、鍵盤楽器用の曲だけでも、ソナタ即興曲、ワルツ、行進曲、幻想曲、楽興の時、連弾曲などなど、無数にあります。また、未完成の曲が多いのも他の作曲家に見られない特徴です。

 

ピアノソナタは全部で20曲ありますが、全楽章が揃って完成しているのは、11曲に過ぎません。それ以外の曲はいくつかの小品を組み合わせるか、断筆しているところから最後までを補筆して完成させなければなりません。

 

幸い、補筆完成版の楽譜が2つあります。バドゥラ=スコダによるヘンレ版、およびティレモによるウィーン原典版です。これらの楽譜はシューベルト愛好家にとって宝のようなものです。

 

シューベルトピアノソナタでは、16番以降の後期の作品が一般によく知られていますが、初期〜中期の曲もまた違った味わいがあります。実は、ピアノ技巧的にはこれらの曲の方が高度であり、弾きこなすのも難しい曲が多いのです。技巧的に最も簡単なのが、最後のソナタ変ロ長調)であるのは誰しも認めるところです。

 

2番(ハ長調)の終楽章の美しさは例えようもありませんし、12番(へ短調)は美しさ、迫力、全体のまとまりの点で、最高傑作といえましょう。

 

短調という調性はハ長調と共に名作が多く、ソナタ12番のほか、連弾用の幻想曲、楽興の時3番、即興曲集作品142の1,4番などがあります。これらの曲だけで「ヘ短調によるピアノコンサート」が開けそうです。幻想曲から開始し、ソナタの後、休憩をはさんで即興曲集作品142で締めくくります。楽興の時3番はアンコールです。ピアニストが2名必要ですけど。

 

ST