光干渉断層計

眼科では、多くの検査機器を駆使して治療方針を決定します。特にクリニックで手術を行う場合、高度な検査機器は欠かすことができません。本日は、その中でも光干渉断層計(OCT)について紹介したいと思います。

 


OCTは近赤外線光を利用して、組織を破壊することなく、その内部構造を観察することを可能にする技術です。さまざまな分野で活用されていますが、とりわけ透明な組織である眼球での利用が盛んです。眼科領域では、この30年間でOCTが無くてはならない検査となりました。

 


特に、網膜に水が溜まるさまざまな病気の診断や、治療タイミングの判定において有効です。OCTが登場する以前は病状の判定が難しく、毎月治療を行う必要がありました。しかし、現在ではOCTを用いて網膜の状態を観察し、必要時のみ治療を行う「治療必要時投与」や、治療間隔を延ばしながら行う「treat & extend」が主流となっています。これにより、治療回数を減らしながら高い治療効果が得られるようになりました。その結果、医療経済的なインパクトは数十億ドルにも及ぶと言われています。

 


さらに、OCTの技術を応用することで、網膜の血流を可視化することも可能になっています。従来は造影剤を注射する必要がありましたが、現在ではOCTの拡張技術であるOCT angiographyにより、造影剤を用いずに検査が可能となり、造影検査の必要性が減りつつあります。

 


私自身、この分野の研究を行っており、OCTの発明者の一人であるDavid Huang博士のもとに留学していました。Huang博士は非常に優しい方ですが、細部にまでこだわる姿勢が印象的で、3年間多くのことを学びました。昨年、このHuang博士がラスカー賞アルバート・ラスカー医学研究賞)を受賞しました。この賞はノーベル賞への登竜門とも言われており、今後のさらなる活躍が期待されています。


KT