老眼手術:多焦点IOL vs IPCL

老眼で悩まれている患者さんは多いです。老眼は水晶体の調節力が年齢とともに低下することで起こります。矯正視力が低下しているわけではありませんので、遠く用、近く用と2種類のメガネを使い分けるか、遠近両用のメガネを上手に使いこなすかすれば日常生活に困ることはありません。運転(TV)用、PC用、読書用の3種類があれば完璧です。

 

しかし、ご自分の屈折が遠視や高度近視の場合、メガネを使いこなすこと自体が困難になってきます。遠視の場合、遠く用のメガネがすでに凸レンズですので、近く用では更に分厚い凸レンズとなり、使いにくい度数のメガネになります。高度近視の場合、メガネでは十分な矯正が得られないため、コンタクトレンズを使うことが多くなります。老眼になると、コンタクトを装用した上に近く用のメガネをすることになり不便です。

 

これらの不具合を解決するのが老眼手術です。老眼手術とは多焦点レンズの眼内移植で、白内障手術で水晶体の中身を摘出した上で、水晶体嚢の中に入れる多焦点IOLと、水晶体を残しつつその前に入れる多焦点の有水晶体眼内レンズ、IPCLがあります。

 

いずれも、水晶体の位置での屈折矯正ですので、メガネやコンタクトレンズよりも矯正効果が高く、良好な視機能が期待できます。

 

比較的若年で調節力が残っており、かつ矯正視力が良好な場合IPCLがベターですが、IPCLを入れるスペースが必要ですので、前房深度2.8mm以上が条件となり、特に遠視眼では適応にならないことが多いです。遠視では前房が浅く、隅角が狭いことが多いからです。

 

結局、遠視眼では多焦点IOL移植、高度近視眼ではIPCLがお勧めです。白内障があり矯正視力が低下している場合、IPCLは不適応で、多焦点IOL移植を考慮します。

 

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