IPCL( implantable phakic contact lens)はICL(implantable collamer lens)と同じく、虹彩と水晶体の間に挿入する後房型の有水晶体眼内レンズです。10年以上前から日本で認可されているICLは、LASIKの適応とならない高度近視の矯正に用いられてきました。IPCLはICLを意識して開発された新規モデルで、ICLにない特徴がいくつかあります。
まず、矯正可能範囲が広いこと。ICLでは軽度近視、遠視、超高度近視の矯正ができませんが、IPCLでは可能です。患者さんに合わせた矯正レンズをほぼ全ての範囲でオーダーして作ることができます。
次に、多焦点レンズをオーダーすることも可能です。IPCLの多焦点は3焦点の回折型で、加入度数も変化させることができます。45才以上の老眼世代に多焦点のIPCLを用いると、屈折異常のみならず老視も矯正することができます。
このように驚くべきカタログ性能をもつIPCLですが、挿入に際してはもちろん、ICLと同様の制限があり、前房深度が浅い、水晶体が安定していない、あるいは屈折が安定していない症例では使えません。遠視の矯正が可能とは言っても、遠視の場合近視よりも前房が浅いことを考えると、適応にならない症例も多いと思われます。
また、多焦点も選択可能とは言え、水晶体を摘出してから入れる通常の多焦点IOLのように、様々な光学特性のレンズが用意されているわけではありません。最近の進化した多焦点IOLでは、透明水晶体にも使えるものがありますので、IPCLとの悩ましい選択が問題となってきそうです。
フルオーダーということで、発注から2ヶ月程度の待機期間が必要となります。
IPCLはICLやアドオンレンズといった旧勢力にとって大いなる脅威となるのではないでしょうか。当院における価格も決定しております(HP参照)。
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