ふっと気が付くと、あと3週間で今年も終わりです。光陰矢の如し。年々速さが増すばかりです。
ほとんど完成され尽くした感のある白内障手術。超音波手術装置を用いること、小切開創から折りたたみレンズを入れること、円形連続前嚢切開(CCC=Continuous Curveliner Capsulorhexis or Continuous Circular Capsulotomy)を行うこと、粘弾性物質を使うことなど、術式の大筋は30年前から変化していません。
しかし、学会、講習会等でいろんな先生のご発表を拝見すると、細かい点ではまだまだいろんな方式が混在しており、術者による個性が発揮されていることがわかります。例えば切開創の作り方ひとつとっても、いろんなバリエーションがあります。
強膜の角膜寄りを切る強膜切開(scleral incision, SI)と角膜の強膜寄りを切る角膜切開(corneal incision, CI)に大きく分かれます。大学で最初に学ぶのはたいていSIです。当院で開院いらい行っているのはCIです。
SIでは切る位置は90°付近(上側)ですが、CIではどこから切ってもよく、一般的には視軸から最も遠い耳側(横)で切開します(temporal corneal incision, TCI)。
当院がTCIにこだわる理由は、その方が手術が簡単になり、より安全だからです。日本人を含む東洋人は顔貌が平坦で、眼窩の窪みも少なく、上からのアプローチがしやすいのですが、西洋人はそんなわけにいかず、海外ではTCIが標準です。
また、TCIを基準に開発される術式も多く、これらに対応するにはTCIに慣れておかなくてはなりません。低侵襲緑内障手術のアイステントはその一例です。
更に、0°~180°のどこからでもアプローチ可能ということで、乱視矯正の強主経線切開が簡単にできます。術後の裸眼視力を大切にした手術を行うには、CIに慣れておかなくてはなりません。
昔は術後感染が心配されたこともありますが、この点でもSIの優越性は否定されています。特に、当院で採用している弧状ブレード(名古屋の市川一夫先生ご考案)を用いれば、CIの創の閉鎖は完璧でありより安心です。
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